百道(ももち)から

考えの切れっぱし

辻山良雄著「本屋、はじめました」を読んで

新聞書評でこの本の作家の辻山良雄さんと、経営する書店の事を知り著作を読むにいたった。本を誰から選んでもらうか、どうやって出合うかというのは重要です。ある日、何気なく読んでいた記事の、辻山さんの選書がピタリときて、何か親和性のようなものを勝手に感じ、ほかにお書きになられたものも読みたいと思い、手にとりました。

辻山さんがなぜ本の仕事に関わることになり、ご自分の書店を開くことになったか、また開くまでの経緯や思想などが実直に、奇をてらうこともなく書かれています。途中から「これから書店を始める人向け」に書いているのかな?と思われる部分もありましたが、本の中では否定はされています。

本好きな人、書店経営を目指す人、一経営者として、など読む角度によって、読みどころはいろいろです。だからといって話がばらけていることはありません。2016年に開業されたTitleという一本の大きな木があって、それをこっちの枝葉によじ登ってみたり、根っこまでもぐったりしたながら知っていく感覚でした。こういう本の送り手がいらっしゃることがうれしくて、読後は多幸感に包まれました。

辻山さんは福岡市天神にあったZ・SIDE内のリブロにお勤めだったそう。福岡市民ならウッとくるほどこの施設の名前が懐かしい。山本容子さんのイラストが描かれたショッピングバッグが洗練されてたなあ。デパートがまだ夢を売っていた時代でしょうか。ちょうどこの週末は九州ウォーカー25周年記念パーティ(という名前の飲み会)があったこともあり、余計にセンチメンタルにもなりました。