百道(ももち)から

考えの切れっぱし

インタビューが好き

 インタビューをするのが好きだ。最近強く思うのは、とにかく対象人物の今を聞き出し、描くこと。今何を思っていて、今何が課題なのか。課題にどう取り組もうと思っているか、方向はどっちを向いているのか。読んでくれる人は今から知る話を、人生の参考にしたいだろうし、何らかの益を得たいと思っているはずだ。「文章を読んで癒された」といわれるのもうれしいが、それは形にあまり残らないので避けたい。読んだ時間に対する何かを捧げたい。そのために対象人物の今を切り取りたい。

 それは人物に限らない。例えば名城であっても今というフィルターを通して伝えることは忘れたくない。

 今を書くには当然、過去を知らねばならない。ディープな準備が必要だが苦労でもなんでもなく、むしろ楽しい。取材時のセッションでその耕した土から、芽が出て大きな花が咲くからだ。しかもその花がどんな花になるのか、取材が終わるまで、書き終わるまでわからない。こんな面白い仕事がほかにあるだろうか。

 取材を終えたあとはテープ起こしという作業がある。一転してこの作業は苦痛で仕方がない。「テープ起こしが楽しみでたまらない」という話は聞いたことがないから、概ね皆そんなものかな。

 テープ音源から起こすのは嫌いだが、やり始めると新たな発見があることも確かで、この作業を人に任せるのにはもったいないとも感じている。文章に反映されるかは別だが現場で得た印象と、テープからの印象は、色が違うと感じることが多い。視覚から情報が入ってこないこと、その話を聴くのが2回目ということもあるが、やはり大きいのは、話し手の声の大小や声色の変化、間合いに、相手の心の揺れが読み取れるからだと思う。聞き手としては違う言い回しで質問すればよかった、という反省も数多く出るところでもある。経験はないが、同じ人物に繰り返しインタビューする仕事をいつかしたい。また違う発見があるのだと思う。

 インタビューはたくさんしてきたが、一度としてされたことはない。取材に応じた人によれば、思いもよらなかった自分の考えが露わになり、整理されたりして良い経験だったと聞いたこともある。カウンセリングではないけれど、インタビューを経験するともしや良いことがあるのかも知れない。インタビュー屋とかやってみようかしら。