百道(ももち)から

考えの切れっぱし

新しさと定番

映画や小説に触れるときは、いつも新しさを求める。自分がつくるものもそう。新しさがあって、誰かに伝えなくてはおれない、そんな羽詰まった感じがなければ、モノを世に送り出す意味はないと思う。

しかし自分という部屋のなかには、安心できるようなものもほしい。定番というやつ。大好きな作家の本につい手を伸ばす、食事をとるならいつものあそこで、といった感じで。出張から家に帰って布団に入ると落ち着くのにも似ている。定番と新しさ。

この配分は人によって違うのだろう。新しさが多いほうがいい人、定番が多いほうが落ち着く人、それぞれ違いそうだ。もしかすると年齢や時期、環境によって配分も変わるのかもしれない。これらを認知できれば、生きやすくなる気がする。

私はといえば、定番よりも新しさを好む。でも実際は定番アイテムで周囲を安定させた上で、ときどき新しいものを出し入れするような、いいとこ取りを意識的にやっていけたらいいのになと思う。

定番が増えれば、安定するから暮らしやすくなるのかも。自分らしい定番の服を決めておくのものこの部類。しかし刺激は少ないし、人に話すネタもなくなる。なんだろう。この文章を書いているとさっきから、制服や軍服、朴訥なおじさんのビジュアルが浮かんでくる。そういったことなのかも知れない。また考えよう。