百道(ももち)から

考えの切れっぱし

多田治著『沖縄イメージを旅する』

多田治著『沖縄イメージを旅する』を読みました。

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仕事のおかげなのですが、年に何度か沖縄に足を運ぶようになって、4年が経ちました。離島も含めてさまざまな土地に立ち、その度に目を見開き、耳をかっぽじって物事を見聞きし、出会う方たちに話を聞きながら、どうにかして沖縄の実像をつかもうとしてきました。しかしそうしようとすればするほど沖縄という場所の大きさにガツンと頭を殴られてきたのが実情です。それほど沖縄という地は多面的で深く、とうていひとつのイメージでは捉えられないのです。むしろ回を重ねるごとにいっそうつかめなくなり、その深さにおののいています。

 

私が初めて沖縄を訪れたのは1996年の夏、SMAPコンサートがきっかけでした。夕方から始まるコンサートを前に、ホテルから近いビーチに行ってみると誰も泳いでいる人はいません。人でにぎわうビーチを想像していた私は面食らいました。日差しが強すぎるから地元の人は日中は泳がないとあとで聞き、リゾートやトロピカルなイメージとは違うなと思ったことを思い出します。そう、そのときの私が描いていたのは沖縄といえば「青い海に白い砂浜」のイメージ。CMイメージのまま、受け取っていたのでした。おそらく今でも多くの方がそうかも知れません。一歩進めてソーキそば、ゴーヤチャンプルー首里城といったキーワードにしたとしても、沖縄の本当の姿は見えてこないと、今の私はいえます。

 

それらを歴史とともに上手にまとめているのがこの本でした。「青い海に白い砂浜」のイメージに限らず、沖縄には内地(沖縄以外の日本国)からさまざまなイメージを植え付けられ、沖縄はその度に役割を演じてきたようです。1970年代の海洋博、2000年の九州・沖縄サミットなどもそうです。それが“イメージである”ことを知ってもらい、取っ払った上で沖縄を知ろうとすること。それが基地など沖縄が抱える問題を理解する一助になると私は思います。この本はその第一歩としてかなりおすすめの良書なのです。